こんにちは。フロンティエスタ代表のDaddyです。
今回は、コーシーシュワルツの不等式という、いかにも難しそうなものを扱っていきます。
中学生でも使えるくらいカンタンな形から、高校生でも使いやすい一般的な不等式の表記までこの記事で完結するようにしていますので、ぜひ最後まで読んでください。
(一応、バリバリ高校生向けの単元です)
それでは早速、いきましょう!
カンタンVer.の不等式
いきなりコーシーシュワルツの不等式を見ても、わけがわからないと思うので、まずは例題を見ていきます。
なんか難しそうな問題がやってきてまいりました。
どうやって証明すると良いでしょうか?
\((左辺) \geqq (右辺)\) が正しいと証明するには、左辺と右辺の差をとる、というのがパッと思い浮かぶ方法。
つまり、\((左辺)-(右辺) \geqq 0\) が正しいと証明すればよい、ということです。
ただ、すこーし計算がだるいので、できれば避けたいところ。下の解答は、実際にだるい計算をしたものです。
\begin{eqnarray}
&&(左辺)-(右辺) \nonumber\\
&=&2a^2 + 2b^2 -(a+b)^2 \nonumber\\
&=&2a^2 + 2b^2 – (a^2 + 2ab + b^2) \nonumber\\
&=&2a^2+2b^2-a^2 – 2ab -b^2 \nonumber\\
&=&a^2-2ab+b^2 \nonumber\\
&=&(a-b)^2 \nonumber\\
& \geqq & 0 \nonumber
\end{eqnarray}
\(a-b\) は実数だから、\((a-b)^2\) は0以上になる。また、\((a-b)^2=0\) と等号が成立するのは、\(a=b\) のとき。
したがって、\((左辺)-(右辺) \geqq 0\) より \((左辺) \geqq (右辺)\) で題意は示された。また、等号成立条件は \(a=b\)
ところが、コーシーシュワルツの不等式を使うとめっちゃ簡単になります。
コーシーシュワルツの不等式とは、下のような不等式です。
コーシーシュワルツの不等式(一部)
\((a^2+b^2)(c^2+d^2) \geqq (ac+bd)^2\)
なお、等号成立条件は \(a:b=c:d\)
まだ何もわからないかもしれませんが、百聞は一見にしかず。
早速解いていきます。
上の不等式に代入しながら解いていくので、ぜひ紙と鉛筆を持って手を動かしてみましょう。
どうです?
代入しただけで問題が解けてしまいました。
これがコーシーシュワルツの不等式の威力です。
コーシーシュワルツの不等式は、\((2乗の和)(2乗の和) \geqq (積の和)^2\) のような形をしています。
コーシーシュワルツの不等式を使う場面
コーシーシュワルツの不等式が、とても凄そう!ということまではわかったと思います。
ただ、
いつ使えばええか分からんわ!
という人もきっといるはず。
ちょっとまとめてみましょう。
次数がぜんぶ等しいとき
『コーシーシュワルツの不等式が使えるか』という判定は、大前提として次数がぜんぶ等しいかどうかで決まります。
\((a^2+b^2)(c^2+d^2) \geqq (ac+bd)^2\) を一度展開してみると、どの項も4次、つまり文字の掛け算が4つになっていることがわかります。
展開しなくても、\(a^2, b^2, c^2, d^2, ac, bd\) はすべて2次です。
実際には、\(a=x^5, a=\sqrt{p}\) などを代入することもあるので、必ず2次になるわけではないということに注意しましょう。
ただ、代入したあと、つまり問題文で与えられている式ではすべて次数が揃っています。
ごくまれに次数が揃っていない超激ムズ問題もなくはないですが、コーシーシュワルツの不等式を使って解く必要がありません。
次数が等しいか、ということにまず着目せなあかんな。
最大値・最小値を求めたいとき
コーシーシュワルツの不等式で使われている不等号って、\(\geqq\) ですよね。
つまり、イコールになることがある、ということです。(難しくいえば、等号成立条件が存在するということ)
この性質を利用すれば、最小値・最大値も求められます。
整数問題をベクトルで解きたいとき
あとで詳しく説明しますが、コーシーシュワルツの不等式の証明の一つに、ベクトル(数学C)を利用するものがあります。
ベクトルを使えば、この不等式は当たり前のように証明できます。
難しい整数問題になると、数式をベクトルとして捉えるとうまくいくことがあります。
その流れの中で、コーシーシュワルツの不等式を使うことがあります。
興味があれば調べてみてください。
文字の範囲が実数全体のとき
コーシーシュワルツの不等式の最大の特長は、文字にどのような実数を代入してもよい、ということ。
つまり、虚数とかでなければ絶対にこの不等式が成り立つのです。
他の有名不等式としては、『相加相乗平均の大小関係』というものもありますが、これは文字が0より大きいとき限定でしか使うことができません。
『\(a, b\) は実数である』のような記述があれば、もしかしたらコーシーシュワルツの不等式が使えるかもしれません。
一般的な不等式(難)
実はコーシーシュワルツの不等式、これだけに収まりません。
次の例題を解いてみましょう。
文字が3つになって、どうやって使えばよいのかわかりませんよね。
一旦、例題は置いておきましょう。
実は、文字をどんどん増やしていっても、やはり成立します。
\((a^2+b^2)(c^2+d^2) \geqq (ac+bd)^2\)
\((a^2+b^2+c^2)(d^2+e^2+f^2) \geqq (ad+be+cf)^2\)
\((a^2+b^2+c^2+d^2)(e^2+f^2+g^2+h^2) \geqq (ae+bf+cg+dh)^2\)
(上の式はスクロールできます)
…さすがに文字が多すぎますね。
高校数学で新たに学んだ表現を駆使して、短く書き換えていきます。
ここで、ある不規則な数列 \(\{a_{n}\}, \{b_{n}\}\) を使ってシンプルに表現しましょう。
(『数列』を勉強していない人はゴメンナサイ)
シグマを使ってもよいですね。
\((a_{1}^2+a_{2}^2+a_{3}^2+ \cdots +a_{n}^2)(b_{1}^2+b_{2}^2+a_{3}^2+ \cdots +b_{n}^2) \geqq (a_{1} b_{1} + a_{2} b_{2} + a_{3} b_{3} + \cdots + a_{n} b_{n})^2\)
または
\(\left(\displaystyle \sum_{i=1}^n a_i ^2 \right)\left( \displaystyle \sum_{i=1}^n b_i ^2\right) \geqq \left(\displaystyle \sum_{i=1}^n a_i b_i\right)^2\)
(上の式はスクロールできます)
これで武器は完全に揃いました。
左辺は、2乗した数の和と、2乗した数の和を、かけ算しています。
右辺は、対応する数同士をかけ算したものをすべて足し、2乗しています。
このとき、左辺は右辺と等しいかそれ以上である、という不等式です。
それでは、もとの例題に戻ります。
新しく拡張したコーシーシュワルツの不等式なら、この問題をいともカンタンに解くことが可能です。
本当は、上の解答には不十分な箇所があります。
少しだけ長くなるので、入試本番で記述対策が必要な方は下をタップして読んでください。
\((a^2+b^2+c^2)^2 \geqq (ab+bc+ca)^2\)
\(a^2+b^2+c^2 \geqq ab+bc+ca\)
本当は、上のように勝手に2乗を外してはなりません。
\((a^2+b^2+c^2)^2 \geqq (ab+bc+ca)^2\)
\(a^2+b^2+c^2 \geqq |ab+bc+ca|\)
正しい変形は上のとおりです。絶対値が絶対に必要。
ここで、下の不等式が必ず成立します。
\(|ab+bc+ca| \geqq ab+bc+ca\)
\(|A| \geqq A\) というカタチならわかりますか?
左辺は絶対にプラスで、右辺はプラスかもしれないしマイナスかもしれない。
というわけで、
\(a^2+b^2+c^2 \geqq |ab+bc+ca| \geqq ab+bc+ca\)
試験ではこれらのことを記述すべきです。
最後の式だけを書けばよいでしょう。
コーシーシュワルツの不等式の証明
いよいよやってまいりました。
コーシーシュワルツの不等式を証明したいと思います。
\(n=2\) のときの証明は、例題1のだるい方の解答に類似しているので、省略。
すべての \(n\) で成立することを証明してきます。
まず、命題はこちら。
$$\left(\displaystyle \sum_{i=1}^n a_i ^2 \right)\left( \displaystyle \sum_{i=1}^n b_i ^2\right) \geqq \left(\displaystyle \sum_{i=1}^n a_i b_i\right)^2$$
私たちが知っている不等式といえば、判別式 \(D\)。
このシグマを使った2次方程式で \(D\) を使った不等式を作ることができれば、なんか良さそうですよね。
実際には、\(n=100\) とかの場合を扱うことはありませんから、この美しいけど難しい証明を覚えておく必要はないと私は思います。
その代わり、\(n=2, n=3\) のときのコーシーシュワルツの不等式を証明できるようになってください。
ヒントは例題1!
ベクトルなら余裕!
実は、ベクトルを知っているとめちゃくちゃ簡単に説明することができます。
今回はカンタンに2次元で証明します。平面ベクトルですね。
丁寧かつ、難しそうな表現で証明しておきますw
ベクトルとは何か?という根本を理解していれば、もはやコーシーシュワルツの不等式が成立するのは当たり前のことかのように思えてくるはずです。
ベクトルを習っていない方は、いずれ理解できる時が来ます。
まとめ
いかがだったでしょうか?
コーシーシュワルツの不等式は、有名不等式の一つで、覚えていて損がない不等式です。
東京大学をはじめ、様々な難関大学で出題されています。
ぜひ復習して使いこなせるようになってください。
それではっ!
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