『加比の理』の補足記事

下の記事について、コメント欄から質問をいただきました。

ありがとうございます。

次の例題についての補足をします。

ちなみに元記事で掲載した解答はこちら。

ここで、\(\dfrac{y}{x} = \dfrac{11m+10n}{10m+9n}\) としてしまって良いのか?という疑問が生まれます。

果たして、この式で \(\dfrac{11}{10}\) と \(\dfrac{10}{9}\) に挟まれる全ての有理数を表せているのでしょうか?

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結論

結論から言うと、『全ての有理数を表せている』ということになります。

なぜなら、\(\dfrac{11}{10}=\dfrac{11m}{10m}, \dfrac{10}{9}=\dfrac{10n}{9n}\) と一般化しているからです。

これにより、さまざまな分母で表される有理数を表すことができています。

\(\dfrac{11}{10} \lt \dfrac{11+10}{10+9} \lt \dfrac{10}{9}\) とは性質がかなり違う、ということですね。

また、\(m,n\) の組み合わせによって、同じ分母でも異なる分子になる有理数を表せています。

数学的には必要十分性を満たしていることが一応は明らかなのですが、どうも腑に落ちないなという人もいることでしょう。

そこで、まずは『内分点の公式』から別のアプローチでこの不等式を証明し、加比の理で求められた \(\dfrac{y}{x} = \dfrac{11m+10n}{10m+9n}\) が正しいことを示そうと思います。

内分点の公式と加比の理には繋がりがあるので、一般化して証明することもできますが、ここでは例題に限って証明します。

その後、数学Ⅲ『極限』を利用した考え方も紹介します。

こちらの方が、極限を知らなくても感覚的に理解できるかもしれません。

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内分点から求める

それでは、内分点の公式を利用して証明していきましょう。

この証明では、内分点の公式を暗記していなくてはならないため、加比の理よりはやや難易度が高い証明ですが、より理解が深まると思います。

ちなみに内分点の公式は次のとおり。

内分点の公式

2点 \(A(a), B(b)\) がある。

線分\(AB\) を \(m:n\) に内分する点\(P\) の座標\(p\) は、次のように求められる。

\(p=\dfrac{na+mb}{m+n}\)

この公式を利用します。


例題において、数直線をイメージしましょう。

\(\dfrac{11}{10} \lt \dfrac{y}{x} \lt \dfrac{10}{9}\) がこの順に並んでいます。

ここで、\(\dfrac{y}{x}\) は2つの数 \(\dfrac{11}{10}, \dfrac{10}{9}\) を内分する点であると考えます。

そうですね、\(a:b\) に内分することにしましょう。

なぜ \(m,n\) を使っていないのかは、後ですぐにわかります。

比は整数で表すことができるので、\(a,b\) はともに自然数であるとしても問題ありません。

それでは、内分点の座標を求めましょう。

\(\dfrac{y}{x} = \dfrac{\dfrac{11}{10} \times b + \dfrac{10}{9} \times a}{a+b}\)

このようになりますね。

さて、\(y\) は自然数です。

つまり、分子は自然数でなくてはなりません。

\((分子)=\dfrac{11}{10} \times b + \dfrac{10}{9} \times a\) ですから、\(b\) は10の倍数であり、かつ \(a\) は9の倍数でなくてはならないのです。

ということで、\(b=10m, a=9n\) とおいて、もう一度綺麗に整理しましょう。

もちろん、\(m,n\) は自然数です。

\begin{eqnarray}
\dfrac{y}{x} &=& \dfrac{\dfrac{11}{10} \times 10m + \dfrac{10}{9} \times 9n}{9n+10m}\nonumber\\
&=& \dfrac{11m+10n}{10m+9n} \nonumber
\end{eqnarray}

もう気づきましたか?

加比の理で求められた式 \(\dfrac{y}{x} = \dfrac{11m+10n}{10m+9n}\) が証明されました。

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極限を使う方法もある

一応、数学Ⅲ『極限』を使う方法も伝授します。

\(\dfrac{y}{x} = \dfrac{11m+10n}{10m+9n}\) を導出する方法ではなく、この式が正しいよー、ということを証明するに過ぎませんが、理解は深まるはずです。

まず、分子を分母で割り算して、帯分数のように変形してみましょう。

\begin{eqnarray}
\dfrac{11m+10n}{10m+9n} &=& \dfrac{ \dfrac{11}{10} (10m+9n)+\dfrac{n}{10} }{10m+9n}\nonumber\\
&=& \dfrac{11}{10} + \dfrac{n}{100m+90n}\nonumber
\end{eqnarray}

この変形が正しいことは、後ろから通分して元に戻ることからわかるはずです。

ここで、\(\dfrac{n}{100m+90n}\) の分子・分母を \(n\) で割りましょう。

\(\dfrac{n}{100m+90n} = \dfrac{1}{100 \cdot \dfrac{m}{n}+90}\)

ここで、\(m \to \infty\) のとき、\(\dfrac{m}{n} \to \infty\) ですから、全体としては \(\dfrac{1}{100 \cdot \dfrac{m}{n}+90} \to 0\) になります。

分母が無限大になったら、その分数は0に近づくのです。

今度は、\(n \to \infty\) のとき、\(\dfrac{m}{n} \to 0\) ですから、全体としては \(\dfrac{1}{100 \cdot \dfrac{m}{n}+90} \to \dfrac{1}{90}\) になります。

ここから言えるのは、次のようなことです。

\(0 \lt \dfrac{1}{100 \cdot \dfrac{m}{n}+90} \lt \dfrac{1}{90}\)

なお、\(m,n\) は任意の自然数ですから、この範囲における有理数は全て網羅しています。

さて、各辺に \(\dfrac{11}{10}\) を足してみましょう。

ここでは、左から \((第1辺),(第2辺),(第3辺)\) と名付けます。

\begin{eqnarray}
(第1辺)&=&\dfrac{11}{10}\nonumber\\
\nonumber\\
(第2辺) &=& \dfrac{1}{100 \cdot \dfrac{m}{n}+90} + \dfrac{11}{10} \nonumber\\
&=& \dfrac{ \dfrac{11}{10} (10m+9n)+\dfrac{n}{10} }{10m+9n}\nonumber\\
&=& \dfrac{11m+10n}{10m+9n}\nonumber\\
\nonumber\\
(第3辺)&=&\dfrac{1}{90} + \dfrac{11}{10} = \dfrac{10}{9} \nonumber
\end{eqnarray}

以上より、\(\dfrac{11}{10} \lt \dfrac{11m+10n}{10m+9n} \lt \dfrac{10}{9}\) が示されました。

範囲が定まり、区間内の有理数を全て満たしていることがわかります。

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まとめ

いかがだったでしょうか?

補足記事なので、簡易的な説明にはなってしまいましたが、加比の理で例題が解けることがわかったと思います。

そもそも \(\dfrac{11}{10} = \dfrac{11m}{10m}\) とする機会が少ないことが、加比の理の理解を妨げる要因になっている気もしますが、これで安心して使えるようになったと思います。

このような感じで、Frontiestaでは記事に関するコメント・質問を受け付けています。

記事を読んだ感想、例題の別解、ご要望など、全て目を通しておりますので、ぜひ書き込んでくださいね。

高校生活との両立の関係上、返信が遅れることがありますが、ご了承ください。

それではっ!

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