
こんにちは。Daddyです。
この記事に辿り着いた方は、ほぼまちがいなく次のような方でしょう。

特性方程式とかいう訳のわからないヤツのせいで、漸化式キライになったんだ
…はい、図星ですよね。
今回は、特性方程式の意味を、ウザいほどにじっくり解説していきます。

結論から言っちゃうと、特性方程式を使わなくても漸化式は解けます。
驚きでしょう?
実は特性方程式は、とあるパターンの漸化式を素早く解くための計算ツールにすぎないのです。
どういうことでしょうか?
それでは早速、Let’s go!
結論

時間がない方のために、先に結論を述べてしまいましょう。
特性方程式は、普通には解けない漸化式を等比数列に変形するためのツール!
謎の漸化式 \(\{a_n\}\) を、等比数列 \(b_{n+1} = r \times {b_n}\) に変形できる!
使えない問題もいっぱいある!
特性方程式はあくまでツールに過ぎません。
使えない場面もあります。
覚えておくと便利ですが、特性方程式に頼らない方法を理解することは、超超超超超ダイジ。
この本質だけ抑えて、これからの章を読み進めてください。
特性方程式が意味不明な理由

それでは、特性方程式が『意味不明な理由』を解説します。
ここではあえて、学校や某有名塾で教わるように書くので、理解できなくて構いません。
謎の方程式を解かされるんだな〜ということがつかめればOK。
さて、下の例題のようなちょっと難しい漸化式を解くときに必要(だと教えられる)ものが、特性方程式です。
\(a_1=1, a_{n+1}=2a_n-3\) で定められる数列 \(\{a_n\}\) の一般項を求めよ。

出たよ。このタイプの難しい漸化式。見た目は簡単なのに。
ここで登場するのが、特性方程式。
今から訳のわからないことを連発しようと思います。
あとでわかりやすく解説しますから、まだ離脱しないでね。
まず、\(a_{n+1}, a_n\) を、謎の文字 \(\alpha\) でいきなり置き換えなさい(?)と教わります。
\(a_{n+1}=2a_n-3\)
\(\downarrow\)
\(\alpha = 2 \alpha -3\)
そして、\(\alpha = 2 \alpha -3\) を解くと(?)、\(\alpha = 3\) になっているから(?)、次のように変形できます(?)。
\(a_{n+1}=2a_n-3\)
\(\iff a_{n+1}-3 = 2(a_n -3)\)
ここで、\(b_n=a_n-3\) と置くと(?)、\(b_{n+1}=2b_n\) となり等比数列のカタチになっているから(?)嬉しいです。
あとは計算するだけ。
\begin{eqnarray}
b_1 &=& a_1-3 = -2\nonumber\\
\nonumber\\
b_n &=& b_1 \times 2^{n-1}\nonumber\\
&=& (-2) \times 2^{n-1}\nonumber\\
&=& -2^n\nonumber\\
\end{eqnarray}
したがって、\(a_n=b_n+3=-2^n+3\) ですね(?)

うん、わからない。ハテナだらけなんだけど。。
数学がそんなに苦手でない人でも、理解に苦しみますよね。
なんせ、\(\alpha, b_n\) みたいな訳のわからない文字ばっかり出てきて、抽象的です。
ところで、計算過程で出てくる \(\alpha = 2 \alpha -3\) という謎の式を特性方程式といいます。
なぜ特性方程式が意味不明かというと、なんで突然 \(\alpha\) が出てくるかわからないからですよね。
この記事では、\(\alpha\) が出てくる理由を解説していこうという訳です。
そもそも特性方程式は必要ない

特性方程式を理解するには、特性方程式が絶対に必要なものではないことを知る必要があります。
使えることも大事ですが、なんせ応用が効きません。
しかも嫌らしいことに、特性方程式さえ使うことができない応用問題は頻出です。
それでは特性方程式を使わない、万能な解き方を伝授します。

まず、人間が解くことのできる漸化式は3つしかない。

等差数列と、階差数列と、あと一つは…

等比数列や。等比数列は、とにかく応用が効きやすい。

だから、どうしても解けない漸化式があったら、無理やりでも等比数列のカタチに変形せなあかん。

じゃ、どうするのさ?

まず、天才の解き方を見てみよう。
\(a_{n+1}=2a_n-3\) を見た瞬間に、両辺を3で引き算したくなる。
どうしても引き算したい。したがって、
\(a_{n+1} -3=2a_n-3 -3\)
少し整理すると、
\(a_{n+1} -3=2(a_n-3)\)
左辺の \(a_{n+1} -3\) と、右辺の \(a_n -3\) は、nの数が1違うだけで、同じカタチ。
つまり、\(b_n = a_n -3\) とおくと、\(b_{n+1} = a_{n+1} -3\) となる。

\(n\) が \(n+1\) に変わるだけ!
したがって、
\(b_{n+1} = 2 b_n\)
(以下は、計算です。読み飛ばしてもOK)
ここで、\(b_1=a_1 -3\) だから \(b_1=-2\)
\(\{b_n\}\) は、初項が-2、公比が2の等比数列であると分かったから、
\(b_n=(-2) \times 2^{n-1} = -2^n\)
\(b_n = a_n -3\) を変形すると、
\(a_n = b_n + 3 = \color{red}{-2^n+3}\)
天才ってすごいですよね。
いきなり両辺から3を引きたくなるんだそうです。

数学は、天才にしかできないのか?

ちゃうちゃう。どんな人でもこの発想ができるようにするための、テクニックがあんねん。
そう。今回皆さんに共有したいテクニックが、特性方程式以外にあるのです。
それは、恒等式を使う方法です。
恒等式で解く

特性方程式も恒等式から導出されたもの。
じゃあその恒等式とやらを勉強してみようではありませんか。
必ず紙と鉛筆を用意して、途中式を書き写しながら読むことを約束してください。
このテクニックの威力を知ってもらうために、あえて特性方程式では解けない例題を紹介しましょう。
\(a_1=1, a_{n+1}=2a_n + 3n -4\) で定められる数列 \(\{a_n\}\) の一般項を求めよ。
それでは、ややくどくなりますが丁寧に解説します。

さて、今回の目標はなんやろうか?

無理やり等比数列をつくることだったね。
それでは、カタチだけ作ってしまいましょうか。
まず、最終目的である等比数列を作ってしまいます。
\(b_{n+1} = 2 b_n\)
等比数列の公比が2になっている理由ですが、これは \(a_{n+1}=2a_n + 3n -4\) というカタチにあります。
\(3n-4\) という部分が邪魔なせいで、等比数列になってくれないんですよね。
それでは一旦取り除いて、\(a_{n+1} = 2a_n\) だけで考えれば公比が2の等比数列になります。
ところが、当然ながら勝手に \(3n-4\) を削除してはいけないので、公比が2であることは変えないまま、新しい数列 \(b_n\) を導入してごまかしているというわけ。
式変形しているうちに理解できるはずです。
左辺の \(b_{n+1}\) は \(n+1\) で表された式、右辺の \(b_n\) は \(n\) で表された式です。
さて、ここで \(b_n\) をどのように表すか、を考えていきます。
文字の部分が違うだけで、係数など他の部分は全て一致しているべきですね。
まずは \(\{a_n\}\) の漸化式をもう一度見直しましょう。
\(a_{n+1}=2a_n + 3n -4\)

数学の天才は、どうやって等比数列のカタチにしてた?

両辺に同じ数を足したり引いたりしてたよね。
実際には、どのような数を足し引きするのかはわかりません。
でも、大まかなカタチはわかります。
左辺には \(a_{n+1}\) しかなく、\(3n-4\) のような部分がくっついていません。
ということは、両辺にnの1次式を足し引きすれば解決しそうです。
そして、左辺と右辺はそれぞれこんなカタチになれば良いのではないでしょうか?
\begin{eqnarray}
(右辺)&=& r(a_n + \color{blue}{pn +q} \color{black}{ ) }\nonumber\\
(左辺)&=& a_{n+1} + \color{blue}{p(n+1) + q}\nonumber\\
\end{eqnarray}

文字だらけでわかんないよ〜
ゆっくり考えてみましょう。
左辺と右辺では、nとn+1の部分が違いますが、基本的に式のカタチが同じになっています。
どういうことかというと、左辺には \(p(n+1)+q\) が加わり、右辺には \(pn+q\) が加わっているイメージ。
\(p, q\) は新しく自分で作った文字です。
また、右辺には等比数列としての公比になる \(r\) がかけられています。

訳わからなくなってきた…

訳わからんくなったら、\(b_n\) で置き換えてみいひん?
\(b_n = a_n + pn + q\) と置いてみましょうか。
\(b_{n+1} = a_{n+1} + p(n+1) +q\) となるのはわかりますよね。
そしたら、次のように置き換えられますよね。
\begin{eqnarray}
&\qquad& a_{n+1}=2a_n + 3n -4\nonumber\\
&\iff& a_{n+1} + p(n+1) +q= 2(a_n+pn+q)\nonumber\\
&\iff& b_{n+1} = 2 b_n\nonumber\\
\end{eqnarray}
ここで、次のような変形をします。
要するに、展開して移項してるだけですが。
\begin{eqnarray}
&\qquad& a_{n+1} + p(n+1) +q= 2(a_n+pn+q)\nonumber\\
&\iff& a_{n+1} + pn+p +q= 2a_n+2pn+2q\nonumber\\
&\iff& a_{n+1}= 2a_n+(2p-p)n+2q-p-q\nonumber\\
&\iff& \color{red}{a_{n+1}= 2a_n+pn-p+q}\nonumber\\
\end{eqnarray}
最後に赤くした式は、よく覚えておいてください。
ここで、係数比較法を使います。
初めに与えられた漸化式である \(a_{n+1}=2a_n + 3n -4\) と、赤くした式 \(\color{red}{a_{n+1}= 2a_n+pn-p+q}\) は全く同じものです。
\(n\) が自然数であれば、どんな数でもこの漸化式は成り立つので、2つの式は恒等式であると言えます。
よって、同じ係数どうしを比べましょう。
\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
p=3 \\
-p+q=-4
\end{array}
\right.\notag
\end{eqnarray}
これを解くと、\(p=3, q=-1\) となるはず。
これを、\(b_n=a_n + pn + q\) と \(b_{n+1}=2 b_n\) に代入してみましょう。
\(b_n=a_n+3n-1\) という式と、\(b_{n+1}=2 b_n\) という式が得られました。
1つ目の式では、\(b_1\) を求めることができます。
\begin{eqnarray}
b_1&=& a_1+3 \times 1 -1\nonumber\\
&=& 1+3-1\nonumber\\
&=& 3 \nonumber
\end{eqnarray}
\(b_1=3, \ b_{n+1}=2 b_n\) はただの等比数列ですよね?
これを解くと、\(b_n= 3\cdot 2^{n-1}\) となります。

やった!これで \(a_n\) が求められるね!
\(b_n=a_n+3n-1\) と自分でおいたので、あとは変形するだけ。
\begin{eqnarray}
a_n&=& b_n-3n+1\nonumber\\
&=& 3\cdot 2^{n-1} -3n+1\nonumber\\
\end{eqnarray}
これで答えが出ました。
だいぶ長かったですが、ここで一つ忠告しておきます。
この問題は特性方程式が使えない、難問です。
はっきりいいます。難問です。
初めは時間がかかって当たり前です。
『遠回りな解き方だなー』ではなく、『この解き方が正攻法である』ことを理解してください。
特性方程式と恒等式の違い


…って待ってよ。僕が勉強したかったのは特性方程式だよ。

分かった。じゃあ初めの問題を恒等式で解いてみようか。
再掲です。
\(a_1=1, a_{n+1}=2a_n-3\) で定められる数列 \(\{a_n\}\) の一般項を求めよ。
それでは解答。
まず、左辺には定数がなく、右辺には-3という定数があります。
これを両辺で揃えるように、定数を足し引きする必要があります。
具体的に何を足し引きしたらいいのかわかりませんが、とりあえず目標となる等比数列のカタチにしていきましょう。
\(a_{n+1} \ – \ \alpha = 2(a_n-\alpha)\) と変形するのが目標。
公比は \(a_n\) の係数から2としたいところ。
もちろんここから展開して、係数比較で解けば先ほどの例題のように答えが得られます。
ですが、ここで一旦、\(a_n, a_{n+1}\) を \(\alpha\) で置き換えてみてください。
\(a_{n+1}=2a_n-3\) が \(\alpha = 2 \alpha -3\) になりましたよね。
この \(\alpha\) についての式を、元の漸化式から引き算してみます。
\begin{array}{r}
a_{n+1} = 2a_n-3 \phantom{00} \\[-3pt]
\alpha = 2 \alpha -3 \phantom{00}\\[-3pt]
\overline{a_{n+1}- \alpha = 2(a_n \ – \ \alpha) }\\
\end{array}

あれ…?よくみたら変形うまくいってない?
その通り。
確かに恒等式を解いても完璧に答えを出すことができます。
ただ、\(a_{n+1} = p a_n + q\) のカタチになっている場合に限っては、この解法のように計算過程を省略して求めることができます。
こうした \(a_n, a_{n+1} \) を \(\alpha\) に置き換えたものを特性方程式というのでした。
ですから、特性方程式は、途中式を省略しただけで、本質的には恒等式を解いているのとなんら変わらないということです。
最悪、忘れてしまっても大丈夫くらいに考えてもらってOKです。
まとめ
いかがだったでしょうか?
特性方程式は、あくまで解き方の1つに過ぎないので、丸暗記してしまっても問題ありません。
今回の記事は、特性方程式の存在にどうしても違和感を感じる方のために、できるだけ噛み砕いて解説しました。
そもそも特性方程式は抽象的な存在で、噛み砕いて説明するのが難しいんですよね。
文字だらけで大変だったと思いますが、原理としては恒等式を解いているのだ、ということを理解していただけると幸いです。
また、\(a_{n+1} = pa_n + qn + r\) のように、nの1次式が加わったような漸化式では、特性方程式が使えないので、恒等式を利用した解法で解くのが正攻法になります。
どういった場面で特性方程式が使えるのか、ということは、見極められるようになりましょう。
それではっ!

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コメント
とてもわかりやすくてありがたいです
これからもお願いします
嬉しいコメントありがとうございます!
読んでいただいた全ての人に『わかりやすい!』と思っていただけるような記事を目指してこれからも頑張ります。
大学受験に向けて、一緒に駆け抜けましょう!
隣接3項間漸化式の場合も同様に解くことは出来ますか?可能であれば式変形を教えて頂きたいです
例:aₙ₊₂+paₙ₊₁+qaₙ
a₁=1 a₂=2 aₙ₊₂=aₙ₊₁=6aₙ
コメントありがとうございます!
3項間漸化式についてのご質問ということですね。
結論としては、aₙ₊₂+paₙ₊₁+qaₙ=0という漸化式に関しても、特性方程式が存在します。
x²+px+q=0という特性方程式です。
ただ、この後の変形がちょっと特殊です。
この特性方程式の解をα,βとすると、次のように変形できます。
aₙ₊₂-αaₙ₊₁=β(aₙ₊₁-αaₙ)
aₙ₊₂-βaₙ₊₁=α(aₙ₊₁-βaₙ)
この2つについて考えなくてはなりません。
とはいえ、この説明だけではやや不親切だと思います。
詳しい解説は近日中に新しく記事として公開しようと思いますので、ぜひそちらもご覧ください。
ご希望であれば、メール等でも対応いたします。
これからもFrontiestaをよろしくお願いします。